毎年冬のシーズンになると猛威を振るうのが高病原性鳥インフルエンザです。養鶏場や動物園などで発生すれば、殺処分や休園といった甚大な被害をもたらします。本記事では、ウイルスの侵入経路や基本的な防止法を整理しつつ、それでも発生してしまう原因と、その課題を解決するための最新技術「レーザー対策」について解説します。
鳥インフルエンザウイルスが侵入する主な3つの経路
鳥インフルエンザの対策を講じるには、まずウイルスがどこからやってくるのか、そのルートを正しく理解する必要があります。ウイルスは目に見えませんが、主な侵入経路は特定されており、これらを遮断することが防疫の第一歩です。ここでは代表的な3つの感染ルートについて詳しく解説します。
感染した渡り鳥や野鳥がウイルスを持ち込む
鳥インフルエンザウイルスの主要な運び手は、シベリアなどの北方から飛来する渡り鳥です。カモ類などの水鳥はウイルスに感染しても症状を示さないことが多く、知らぬ間にウイルスを日本国内へ持ち込んでしまいます。これらの渡り鳥が国内の留鳥(スズメやカラスなど)と接触し、ウイルスを広げていくのが一般的な感染拡大のパターンです。
感染した野鳥が農場や飼育施設の近くに飛来し、飼育されている家禽と金網越しに接触したり、同じ水を共有したりすることで感染が成立します。したがって、まずは外部からの野鳥を敷地内に近づけない、あるいは接触させない工夫が求められるのです。
野鳥の糞や死骸に汚染された水・餌を摂取する
直接的な接触だけでなく、環境を介した感染も大きなリスク要因です。ウイルスに感染した野鳥の排泄物には大量のウイルスが含まれており、これらが池の水や野外に置かれた餌を汚染します。特に、ため池の水を消毒せずに利用している場合や、餌箱を野外に放置している場合は警戒が必要です。また、野鳥の死骸をつついたり、その近くで活動したりすることも感染源の一つです。目に見える野鳥だけでなく、彼らが残した痕跡にも細心の注意を払わなければなりません。
ネズミやハエ、人の衣服や車両を介して媒介される
ウイルスは、野鳥以外の小動物や人、物を介して持ち込まれることもあります。これを「機械的伝播」と呼びます。例えば、鶏舎周辺に生息するネズミやハエ、ゴキブリなどの害虫がウイルスを体表に付着させ、そのまま飼育エリア内に侵入するケースです。また、農場に出入りする従業員や関連業者の靴底、車両のタイヤ、使用する器具などにウイルスが付着し、知らず知らずのうちに施設内へ持ち込んでしまうリスクも無視できません。
野鳥対策と同時に、こうした媒介者となる小動物の駆除や、出入りする人・物の衛生管理を徹底することが、感染リスクを下げるためのポイントといえるでしょう。
従来の対策を講じても感染が発生してしまう原因
ここまで紹介した基本的な対策を講じていても、残念ながら鳥インフルエンザの発生を完全に防ぐことは難しいのが現状です。実際に、厳重な管理体制を敷いている大規模農場でも感染事例が報告されています。なぜ、既存の対策だけでは不十分なのでしょうか。その背景には、物理的な防御の限界や、鳥の学習能力といった課題が存在します。
飛翔中の野鳥から落下する糞までは防ぎきれないから
防鳥ネットを設置すれば、野鳥の侵入そのものは防げます。しかし、上空を飛んでいる野鳥から落下してくる「糞」までは、ネットで完全に防げません。野鳥の糞は液体状であったり、乾燥して粉末状になったりするため、ネットの網目を通り抜けて敷地内に落ちてくる可能性があります。特に、渡り鳥の飛行ルート下に位置する施設では、空からの糞害によるリスクが顕著です。落下した糞が乾燥して塵となり、風に乗って鶏舎の隙間から入り込めば、中の家禽がウイルスを含んだ空気を吸い込んでしまう恐れがあります。
このように、飛来する鳥を直上まで許してしまう時点で、感染リスクをゼロにすることは極めて困難だと言わざるを得ません。
広大な敷地や屋外展示場を完全に覆うのは困難だから
養鶏場であれば鶏舎を密閉することも可能ですが、放し飼いの農場や、動物園の展示場、水族館のペンギンプールなどは状況が異なります。広大な敷地や開放的な屋外スペースをすべて屋根やネットで覆うことは、コスト面や構造上の理由から現実的ではありません。
完全にカバーできないエリアでは、野鳥の飛来を許してしまいます。池や水場にカモが降り立ち、水を汚染させてしまうケースも後を絶ちません。
物理的な遮断が難しい環境においては、ネット以外の方法で野鳥との距離を保つ手段を講じる必要があります。既存の設備対策だけではカバーしきれない「隙」が、感染の入り口となっているのです。
既存の鳥害対策機器(音や光)に鳥が慣れてしまうから
ネットが張れない場所では、爆音機や目玉風船、忌避剤、LEDの点滅装置などが利用されてきました。しかし、これらの対策には「慣れ」という大きな弱点があります。鳥は学習能力が高く、最初は警戒して近づかなくても、自分に実害がないと分かればすぐに順応してしまいます。
設置して数日は効果があっても、次第に鳥が戻ってきてしまい、対策効果が薄れていくのが一般的です。頻繁に機器の種類や設置場所を頻繁に変えるなどの工夫も必要ですが、それには多大な手間と労力がかかります。持続的な効果が期待できない点も、従来の対策における大きな課題の一つといえるでしょう。
飛来そのものを防ぐ「レーザー」を活用した新しい感染防止策
「ネットの隙間から落ちる糞」や「広範囲で覆いきれない場所」、「鳥の慣れ」といった課題を解決するために、近年注目を集めているのが「レーザー」を活用した鳥害対策です。これは、鳥の視覚特性を利用して、対象エリアへの飛来そのものを防ぐ画期的な手法です。ここでは、ESSK社などが提供するレーザー製品の特徴と、それがなぜ根本的な感染防止策となり得るのかを解説します。
鳥の本能的な恐怖心を刺激してエリアへの侵入を断つ
レーザー対策の最大の特徴は、鳥の本能に作用する点です。鳥は視覚が発達しており、特定の波長のレーザー光を「迫りくる固形物」として認識します。そのため、自分の居場所にレーザーが照射されると、あたかも棒で攻撃されているような恐怖を感じ、反射的にその場から逃げ出します。音や脅しではなく、本能的な危険を感じさせるため、鳥がその場所に居心地の悪さや危険を感じ、寄り付かなくなります。
物理的に鳥を傷つけることなく、学習効果によって対象エリアを「危険地帯」と認識させることで、飛来そのものを減らせるでしょう。これにより、上空からの糞害リスクも大幅に低減できます。
ネットが張れない広範囲の場所でもピンポイントで対策できる
レーザー光は直進性が高く、遠距離まで届く性質を持っています。そのため、防鳥ネットの設置が難しい広大な農場や、屋根の上、ため池の水面など、人が立ち入りにくい場所でも遠隔から対策を実施可能です。例えば、鶏舎の屋根に野鳥が止まって糞をすることを防ぎたい場合、屋根に向けてレーザーを照射することで鳥を追い払えます。
また、動物園のペンギンプールのように開放感を損ないたくない場所でも、景観を崩さずに鳥害対策を講じられます。必要な場所にピンポイントで、かつ広範囲をカバーできる点は、従来の物理対策にはない大きな利点です。
早朝や夜間も自動稼働し持続的な効果を発揮する
鳥インフルエンザを媒介する野鳥は、早朝や夕方などの人がいない時間帯にも活発に動きます。人手による追い払いが難しいこうした時間帯でも、自動稼働するレーザー装置であれば隙のない防除が可能です。ESSK社のレーザー鳥害対策器などは、あらかじめ設定したプログラムに従ってランダムなパターンでレーザーを照射できます。動きが不規則であるため、鳥が動きを予測できず、「慣れ」が生じにくいという特性があります。
24時間365日、休むことなく監視と防除を継続できるため、飛来する鳥を寄せ付けないという根本的な感染対策として、高い効果が期待できるでしょう。